狂ったままの調律

昨日、落ち込んだまま眠れずに結局、4時過ぎまで起きていた。何をするでもなくただぼーっとしていた。本当は泣けたら感情を発散することができ、落ち着いたのかもしれないが、心がギリギリと軋んではいるがその痛みを涙に変換できずただ何も出来ないまま時間だけが空虚に流れていた。

気分転換に昔やっていたベースを取り出して弾いてみることにした。日の目をみることもなく、もはやインテリアと化したそれを抱える。弦の錆、指板の汚れが目立ち、放置され狂ったままの調律。耳で聞きながら調律を合わせて記憶を手繰り寄せて昔弾いた曲を奏でてみる。曖昧な旋律、覚束ない指運。記憶は朧げで思い出すことも出来ないくらいだったし、以前は弾けていたフレーズのはずなのに指が全く動かない。随分長いこと音楽から、楽器から離れてしまっていたから無理もない。嫌になって自分から離れた。今更悔いても仕方がない。音楽自体聞けない時期もあった。それをなんとか乗り越えようとして、最近ようやくまた音楽に興味を持てるようになってきた。それでも昔弾いた曲、思い出のある曲を聴くたびあの頃の記憶が鮮明に呼び起こされるから困る。その過去に対して後悔をしてみても、私がそこに戻れるわけでもなく、帰る場所がそこにあるわけでもなく、ただ取り零した可能性に縋っているだけ。狂った調律で不協和音を奏でるそのベースのような歪んだ幻想。ずれた音で不調和に空回り、時間を空疎に消費する。落とした可能性は未来ではない。不協和音を正した時、ようやく現在を認識し未来を見据えることができる。正しい調律のベースを抱え、認識の歪みも正す時だ。