雨とシロップ

鳴り響く雨音が泣き出しそうな心にも波及する。悲しみを溜め込んだ空がそれを一気に解放しているのだろう。

昨日は私の人生が始まった日で、一般には誕生日という喜ばしい日。歳が一つ増えるだけの何時もと変わらない日なのに今年は少しだけ心待ちにしていた。その日に好きなバンドのライブがあり幸運にもチケットが手配できたからだ。

Syrup16g。甘ったるいその名前のバンドは痛々しいまでに辛辣でリアルな音楽を奏でる。聴いている者の心を抉り現実を突きつけるような歌詞に、辛くなりながらも中毒症状のように手を伸ばしてしまう。そのバンドは解散して沈黙を続けたのちに再結成した。私が好きになった頃には既に解散していたので、もうライブを見ることは叶わないと諦めていたので復活の報せを聞いた時とても嬉しかった。そしてライブに行く夢さえ叶えられてしまったのだ。

ライブのレポートのように詳細に書き留めるだけの文才は残念ながらなく、セットリストを覚えているだけの記憶力もないので簡潔に。開演して幕が上がり光に包まれた3人を見たときあまりの嬉しさに泣きそうになってしまった。ライブ会場に来れたことを実感したのと生きて生音が聴けたことに歓喜したのだ。復活後の新規の曲だけでなく以前の曲まで演ってくれた。好きだった曲が聴けたのが良かった。とくに「HELPLESS」と「正常」のこの二曲にはやられた。反則だ。思い入れが強いのもあり心響き過ぎた。あとは客席から投げられた格好良いという言葉に、五十嵐がありがとうと返したのにほっこりしたのと、大樹ちゃんのドラムの力強さに圧倒され、マキリンのベースは安定感があり芯のある音が心地よかった。 とても楽しい一日を過ごした後の寂しさからかすこしセンチメンタルな気持ちになる。祭りの後の静けさは嫌いではないが孤独感に心を奪われると自己嫌悪に走ってしまうのが辛いところ。強い人間になりたい。弱さも含めて自分なのだろうが、一時の感情に振り回されないくらいになれないものだろうか。このままではいられない焦燥と不安。

今は雨の音と恋人の笑い声を聞きながら、つらつらと文字を刻み平穏な一日を堪能している。時には好きなことだけをするのも悪くはないのだろう。